馬主になった少年


ラマザンが以前働いていたホテルのオーナーの弟は、8年ほど前に病気で亡くなった。
当時、彼には生まれたばかりの息子がおり、父を知らない赤んぼ(仮名:のぶお)は、それでもこの国特有の、家族親戚ご近所さん、その他いろんな人にやさしく見守られて育てられるという環境に育ち、ようやく今年3年生になった。
明るく朗らか、そして、なんと説明していいか適切な言葉が見つからないけれど、例えて言うならえべっさんのような、そんな笑顔で「ラマダンあーびー、なすーすん~?(ラマザンにいちゃん元気?)」と、誰かにもらったであろうかぼちゃを抱え通り過ぎてゆく。ポケットの中の小銭を彼に託すラマザン。「てしぇっきゅれ~。(ありがと~)」と大きく手を振る彼。

のぶお君の家族は、週に200円ほどの野菜で生活をしている。

しかし、のぶお君は今、競走馬の馬主である。


3年ほど前、ボドルムに住むある初老のご夫婦がセルチュクを旅行で訪れた。町中で偶然のぶお君を見かけ、会話をし、のぶお君の父が亡くなったことを知る。「ボドルムへ遊びにおいで。今からいっしょに行こう。」と言うと「おかあさんに聞いてからでないとね~ぇ。」と家に帰る。のぶお君の母は「行きたいなら行っといで。」という反応。ご夫婦はのぶお君と一緒にボドルムへと出発した。

夫婦は、車内でいろんな話をしながら、のぶお君にひとつ質問をする。「のぶお君の夢は、何?なんでもいい、ひとつ教えて。」のぶお君はこう答えた。「馬が欲しいんだよね~ぇ。でも、普通の馬じゃなくって、競争する馬。おっきくって、走るの早くって、かっこいい馬。」すると夫婦は車を違う方向へ走らせ、ムーラという町の、とある馬場へ行き、一頭の真っ黒い競走馬を買う。馬をのせたトラックと共にセルチュクへ戻り、のぶお君に別れを告げ、そしてボドルムへと帰っていった。

ここトルコでも、いい競走馬一頭は、いい車を新車で買うような値段。ラマザンは「あの馬は、アッラーからのぶお君へのギフト。」と、いつもうれしそうな顔でこの話をしてくれる。




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トルコ

Comment

じーん

こんにちは。
ご無沙汰いたしております。メールではなくて、ブログでコメントさせていただくのは初めてかもしれません。宜しくお願いします♪
素敵なお話ですね。本当にアッラーからの、そして亡くなったお父様からの贈りものですね。のぶお君とその馬の毎日の交流を勝手に想像してじーんとしています。黒いお馬さんとともに優しくて立派に育ちます様に。
  • 2017⁄03⁄10(金)
  • 10:27
  • [edit]

こんにちは

>Fumiyoさん
コメントありがとうございます。お元気でいらっしゃいますか?お子さまもすくすく育ってらっしゃることと思います。
まるでトルコ版あしながおじさんのような話ですが、事実なんです。そのご夫婦の目にたまたまとまったのぶお君に起こった奇跡。トルコの田舎のこんな身近に、こんなドラマティックなことがあるなんて驚きです。お金ではなく夢を与えたそのご夫婦の行為に感動します。
「宝くじが当たったら身寄りのない子供たちが入院する病院に寄付したい」と常日頃夫は言っていますが、自分たちの生活だけで今はぴいぴい、まるで現実味のない話ですけれど、いつか実現するといいなと思います。
  • 2017⁄03⁄12(日)
  • 20:53

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